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心臓病科

獣医療の発展や環境・食生活の改善に伴い動物の寿命が延びています。それに伴い心臓病に罹患するペットが増えており現代では心臓病は犬の死亡原因の第2位、猫では第4位となっています。
心臓はすべての臓器や組織に血液を介して酸素や栄養を供給する重要な臓器なので、心臓病にかかると全身に十分な酸素や栄養を供給することができず、疲労や呼吸困難、食欲の低下など様々な症状が現れてきて、悪化してしまうと死に至ることもあります。心臓自体は一度悪くなってしまうと元には戻らないので、早期に発見をして治療をはじめることが最も重要です。

- 心臓病の症状 -

・咳   ・呼吸困難   ・疲れやすい   ・食欲低下   ・腹水 むくみ   ・失神

- 心臓病の検査 -

身体検査

心臓の検査としては聴診が最も重要です。心臓病になると、ザーザーといった心雑音が聞こえることが多いです。ただ、中には心雑音のない心臓病もあるのでその場合は他の検査で心臓病を診断します。

レントゲン検査

心臓の大きさや、肺や気管の状態、胸腔内の異常などが多くのことがわかる検査です。肺水腫の評価にも最適です

超音波(エコー)検査

心臓内部の大きさや構造の異常の把握、心機能の評価に有効な検査です。この検査により、心臓病の種類、重症度などを把握することができます。

心電図検査

心拍数や不整脈の有無などがわかります。

これらの検査を組み合わせ、総合的に心臓を評価し病気を明らかにします。そして、こうした診断をもとに治療を開始した後もその効果をみるために定期的に検査を行います。

- 心臓病の症状 -

< 主な心臓病 >

僧帽弁閉鎖不全症

犬の心臓病の75%が僧帽弁閉鎖不全症です。マルチーズやトイプードルなどの小型犬やキャバリアに多くみられる病気です。加齢に伴って心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁がきちんと閉まらなくなり、血液が逆流し左心系に血液が鬱滞することによって症状が現れます。病態が進行すると、肺水腫を起こし呼吸困難になり、喉にものがつかえたような咳をしたり、運動したがらなくなったりします。治療は薬剤投与による内科的治療が主であり、今現れている症状をできるだけ抑えてQOL(生活の質)の改善を目指します。また、近年は外科的治療も行われるようになっています。


左心房の拡大と僧帽弁の逸脱

僧帽弁領域で血液の逆流がみられる

心機能の検査

血液の流速の測定

正常な心臓

心陰影拡大と肺水腫

心筋症

心筋症とは心臓の筋肉が何らかの原因により変性・壊死を生じることで、心筋の機能が低下し心拍出量が保てなくなる病気です。この心筋症は拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、未分類型心筋症などいくつかのタイプに分類されます。大型犬で拡張型心筋症が、猫で肥大型心筋症の発生が多いです。軽症の場合は、無症状か元気がない程度ですが、重症になると肺水腫や胸水貯留などによって突発的な発咳や呼吸困難を起こします。猫では大腿動脈の血栓塞栓によって後肢麻痺が起こることもあります。また不整脈により突然死が起こることもあります。治療は血管拡張剤、強心剤、利尿剤などを症状に応じて投与し、心臓の負担を減らします。原因として遺伝的要因が考えられることから完治は困難です。

フィラリア症

蚊が吸血をした際に、フィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)が体内に入り感染します。体内に入ったミクロフィラリアは約6ヵ月で成虫になり右心室と肺動脈に寄生します。成虫が心臓にたくさんいると血液の循環が悪くなり、咳や呼吸困難、腹水、貧血などの症状がでてきます。治療は、薬による内科治療と手術によりフィラリアを摘出する外科治療があるが、どちらもリスクがあります。本症は予防薬を定期的に投与すれば100%予防できるので、予防することが最も重要です。